認知症と聞くと、漠然とした不安を感じる方もいると思います。まずは認知症について、正しく理解することが大切ですね。
葵の園・江東区 施設長で、日本認知症学会 専門医でもある 髙野喜久雄先生に認知症についてお話を伺いました。
認知症には様々な種類があります
ひと口に認知症と呼ばれていますが、認知症には様々な病気が含まれています。
・アルツハイマー病
認知症の中で最も多く、全体の5割を占めているといわれています。脳が委縮し、脳細胞に有害なたんぱく質アミロイドβが沈着して、脳の神経伝達のネットワークが崩れることで認知症を発症します。
・血管性認知症
脳の血管の損傷によっておこる認知症です。
・レビー小体型認知症
脳の神経細胞の中に小さな円形のたんぱく質の集まりが現れて、脳の機能を障害して発症します。パーキンソン病に似た症状がみられます。また、幻視があることも特徴です。最近多くみられるようになってきました。
・前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉前方に委縮が生じ、行動障害を起こすことが多く、記憶障害はあまり目立ちません。
・慢性硬膜下血腫
頭蓋骨の内側の硬膜の下に出血が起こって血液の塊ができて起こる認知症です。頭を打った数週間目に起こることが多い病気です
・正常圧水頭症
頭の中の髄液が何らかの原因で脳室にたまることで発症します。
早期発見で治療ができる認知症があります
認知症は治らない病気とされ、対症療法しかないと思われていますが、早期に発見して適切な治療を行えば、治る可能性の高い認知症もあります。
例えば慢性硬膜下血腫は、血腫を取り除くと劇的によくなります。また、正常圧水頭症も、髄液を排出することで治療できます。
いずれも早期に検査を受ける必要があり、検査方法は、CT、MRI等があります。CTはX線を使ったコンピューター断層撮影で、頭部の外傷や脳出血などを素早く診断することができます。
MRIは、電磁気による画像検査です。磁石でできた筒の中に入り、体の臓器や血管を撮影します。CTと違い、X線は使いません。脳腫瘍・脳梗塞・脳出血などの有無を調べ、発症時期を推測することが可能ですが、測定に時間がかかります。
認知症は予防できる?
アルツハイマー型認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療は、認知症予防となります。
井戸端会議がおすすめ
脳は使わないと働きが悪くなります。日常の中で感じたことやテレビを見た感想を話したり、人と話をすることも大切です。
暑くなる時間をさけて散歩を
毎日、20分から30分、散歩をしましょう。身体を使うことで筋肉からいいホルモンが分泌されます。また、前から人が歩いてくる、花が咲いている等、家の中では感じることができない刺激を受けることができます。
体重チェック
栄養バランスが崩れると体重に変化が現れます。月に1回は体重をチェックしましょう。
認知症は早期に発見して適切な対応をすることで進行を抑えることができます。少しでも気になることがあったら、「もう歳だから…」と素人判断せずに、受診することをお勧めします。
お話し
葵の園・江東区 施設長
日本認知症学会 専門医
日本老年精神科医学会専門医
日本糖尿病学会専門医
日本リハビリテーション医学会専門医
髙野喜久雄先生