子安 一宏(こやす かずひろ)さん(82歳) 昭和18年(1943年)生まれ
子安一宏さんは、昭和18年(1943年)生まれで、現在82歳。会社経営で得た資金を元に「社会奉仕基金」を積み立て、約20年間に渡りその基金を、日本の文化財保護をはじめウクライナ避難民への支援や沖縄やサイパンでの戦没者の遺骨調査・収容など、幅広いボランティア活動に活用されています。
岐阜から東京へ
子安さんは、高校3年生・18歳まで岐阜で過ごし、高校卒業と同時に三菱ケミカルに就職しました。周囲には東京大学をはじめとする名門大学を卒業した人が多かった中で、学歴にとらわれることなく実力を認められ、定年60歳まで勤め上げました。そして退職後、2003年に自ら会社設立し、80歳まで第一線で活躍しています。
母から学んだ「利他の精神」
子安さんの母・たきのさんは、常に相手や他人の利益や便益を優先し、自らを捧げて尽くすという「利他の精神」を大切にされていました。幼い頃から子安さんも、そんな母からよくブッダ、親鸞、鑑真、野口英世、乃木希典などの話を聞かされていました。
仕事を続ける中70歳頃、「自分にできることを始めたい」との思いから活動を始めました。お金の活かし方について考えを深め、寄付を行うようになりました。「人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」というアインシュタインの言葉を胸に刻んでいる子安さんは、「自分はすでに十分恵まれ、多くを得てきた。得てきたものを誰かのために役立てたい」と語ります。
自分らしく生きる。今、自分にできること
子安さんが現在最も力を注いでいるのは、ウクライナへの支援、戦没者の遺骨収容及び郷里のお寺(浄源寺)の運営に関する活性化の助言などの活動です。
遺骨収容のボランティアは、全て自費で行われており、国のために命を捧げながらも、遺骨を拾ってもらえず眠り続けている方々を想い、活動を続けています。「人間と動物が異なる基本的な点は2つ。1つは、自分自身と他者を幸せにできるよう努力すること。もう1つは、亡くなった方を弔い、その弔いを通じて恩を感じることができるということです」と語ります。戦没者はその2つが十分に果たされていないと感じた子安さん。「自分がやらなければ」と活動を始めました。
沖縄の遺骨収容現場では、NPO「空援隊」の呼びかけに応じて、大学生、地元の方、自衛隊などの有志の方々が、献身的かつ積極的に参加しています。
子安さんの子供時代には仏教の精神が生活に根付いていましたが、戦後の自分ファーストな文化の広がりと共に利他の心は薄れていったそうです。その中で子安さんは、戦前の良いことも悪いことも、若い世代に伝えていくことの大切さを強く感じています。「伝えることこそが、自分の使命。自分の将来や自分にできることについて考える機会も持ってほしい」と語ります。

空援隊の活動中の一枚。
日本ウクライナ交流会
先の大戦では、国や大切な人を守るために多くの方々が戦い、その尊い命およそ315万人が国内外で亡くなっています。また、日本本土で唯一の地上戦となった沖縄戦では、子供を含む多くの住民が戦いに巻き込まれ、軍民一体となった総力戦の末、20万人を超える尊い命が失われるという惨状となりました。
子安さんは、現在のロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにし、その姿を沖縄戦と重ね合わせました。ウクライナが国を挙げてロシアに懸命に立ち向かう姿を見て、「日本ウクライナ交流会」を発足しました。
「義を見てせざるは勇なきなり」の言葉を想い起こし、自分のできる範囲でウクライナ本国への寄付や江東区に暮らす避難民の方々への支援にも取り組んでいます。
困難に立ち向かうウクライナの皆さんを心から応援したいという思いで活動を続けています。
ウクライナ避難民の皆さんから
私たちは、ロシアの侵攻で、遠い日本に逃げてきました。慣れない日本での生活や言葉の壁に戸惑いながら必死で生きています。
「日本ウクライナ交流会」は、ストレス解消のための食事会や観光、子供の学校サポート、江東区のイベント参加など多くのことをサポートしてくださり、日常生活をしていく上で、私たちはとても助かっています。子安さん、本当にありがとうございます。
空援隊
2005年に設立した空援隊の活動主旨は「戦没者の御遺骨を祖国にお迎えするための道筋を作ること」です。戦没者の遺骨調査・収容を行い、情報収集・現地協力・埋葬支援などを通じ、慰霊と文化的な相互理解を促進しています。一刻も早く、少しでも多くの戦没者の御遺骨を日本にお迎えするために、国内外の多くの個人・団体と協力し合いながら、立ち止まらず活動を続けています。
遺骨収容に尽力する空援隊(事務局スタッフ一同)から
子安さんは、入隊されて12年になりますが、ご高齢でお忙しいにもかかわらず、資金援助やサイパン・沖縄での現地の活動に積極的にご参加いただいております。今後とも、かけがえのない仲間の一人として、ご一緒に活動できることを空援隊スタッフ一同心から切望しております。
浄源寺ご住職から
長年にわたって御堂の改修工事や納骨堂建立への寄進、浄源寺の歴史・お釈迦さまと親鸞聖人の教えや生涯をまとめた著書の奉納、将来の寺の運営に関する厳しくも温かい助言などを賜り、心から感謝しております。


