睡眠時無呼吸症候群

命に関わることもある睡眠時無呼吸症候群について、望月内科クリニック 院長 望月俊男先生に伺いました。

「眠っているのに疲れる?」——睡眠時無呼吸症候群とは

朝起きたとき、「よく眠ったはずなのに疲れが残っている」と感じたことはありませんか?それ、もしかすると「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」かもしれません。

この病気は、眠っている間に呼吸が何度も止まるというもの。医学的には、10秒以上の呼吸停止が1時間あたり5回以上、あるいは一晩に30回以上起こると診断されます。呼吸が止まると酸素が不足し、脳や体が十分に休めません。

いびきだけではない症状

代表的な症状は「大きないびき」「日中の強い眠気」「集中力の低下」「起床時の頭痛」など。家族から「寝ているときに息が止まっている」と言われることもあります。

放置すると高血圧、心疾患、脳卒中などのリスクが高まり、命に関わることもあるため、早めの対処が大切です。

原因は気道の閉塞

主な原因は「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」です。眠っている間に舌や喉の筋肉が緩み、気道が塞がれてしまうタイプです。
肥満、加齢、アルコール摂取などが関係し、特に日本人は顎が小さく気道が狭くなりやすいため、欧米人よりも発症しやすい傾向があります。

検査は段階的に

診断の第一歩は、自宅でできる簡易検査です。呼吸や酸素濃度を測定し、睡眠中の異常を調べます。機器を装着して一晩眠るだけなので、痛みもなく手軽です。

さらに詳しく調べる必要がある場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。脳波、呼吸、心拍などを総合的に記録する検査で、正確な診断には欠かせません。PSGは通常、病院に一泊して行う検査ですが、医療機関によっては自宅で実施できる場合もあります。

治療法は?

治療の中心は「CPAP(シーパップ)療法」。鼻にマスクをつけ、空気を送り込んで気道を広げる装置です。慣れるまで時間がかかることもありますが、使用すれば睡眠の質が劇的に改善します。
軽症の場合は、マウスピース(口腔内装置)や生活習慣の改善(減量、禁酒、横向きで寝るなど)も有効です。

社会的にも重要な病気

この病気は特に中高年の男性に多く、女性でも閉経後に増加します。居眠り運転の原因にもなり、交通事故のリスクを高めます。企業や自治体でも、従業員の健康管理の一環としてSASの啓発や検査を推奨する動きが広がっています。特に運輸業や建設業など、安全性が求められる職場では、定期的なスクリーニングが事故防止に直結します。

日本での患者数は200万人以上と推定されていますが、診断がついているのは一部にとどまり、多くの方が自身の病気に気づいていないのが現状です。

「ただのいびき」と思っていたら、実は命に関わる病気だった——そんなことにならないよう、気になる症状があれば早めに医師に相談しましょう。睡眠は、健康の土台ですから。

望月内科クリニック
院長
望月 俊男先生

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