お口の中を清潔に保つことは、口腔内だけでなく、体全体の健康を保つことに繋がります。高齢の方に多い口腔内の問題と、健康を保つために必要な口腔内の手入れについて、砂町北歯科、院長、下田隆司先生に伺いました。
年齢を重ねると体にはさまざまな変化が現れますが、それは口の中も例外ではありません。高齢者の口腔内で起きている問題を見ていきましょう。
①自浄作用が低下している
唾液の力で歯の表面や舌、粘膜に付いた汚れや細菌を洗い流し、清潔に保つようになっているのですが、唾液の分泌量が減っている高齢者の口腔内は、自浄作用が低下しています。
②虫歯や歯周病が多い
加齢によって歯茎が下がり歯の根元が露わになると、そこから虫歯になりやすくなります。また、本来は唾液で洗い流されるはずの細菌が増殖し、歯周病にもかかりやすい状態です。
③治療跡や入れ歯の陰で虫歯が進行
高齢の方は、虫歯や歯周病にかかった経験が多く、詰めものなどの治療跡が残っている人も少なくありません。詰め物をしている場合は、その下で虫歯が進行していることがあり、入れ歯を使用している場合は、入れ歯と粘膜の隙間に細菌が繁殖しやすくなります。
他にも、自浄作用が低下しているための味覚障害や口腔内の乾燥があります。
口腔ケアの重要性
口腔機能が低下すると、「噛んで味わう」「飲み込む」といった動作をスムーズに行えなくなるため、十分な栄養を摂取できません。栄養不足状態が続くと、運動機能の低下や認知症の進行、さらなる摂食障害につながる可能性があります。口腔ケアは、歯磨きや口腔内の洗浄で歯周病などを予防するだけでなく、摂食トレーニングや誤嚥性肺炎の予防といった高齢者の身体機能の回復につながる内容も含みます。
口腔ケアの2つの種類
・自分自身で口腔内を清潔に保つセルフケア。
・歯科医や歯科衛生士などの専門家が口の中と全身の状態を見て、より専門的なケアとアドバイスをするプロフェッショナルケア。
両方を取り入れることが大切です。
唾液の分泌を促進する
口腔ケアで口の中を清潔にすると、唾液の分泌が促進されます。また、歯ブラシなどで「唾液腺」を刺激することで、唾液腺の働きを活発にし、意図的に分泌量を増やします。唾液の量を増やすことは口腔ケアにおいて重要なポイントです。
感染症や発熱を予防する
口の中にいる細菌の中には、表皮感染症や食中毒を引き起こす「黄色ブドウ球菌」、呼吸器感染症を引き起こすおそれのある「肺炎桿菌」など、全身疾患の原因となる菌も存在します。口腔ケアには、感染症や発熱の予防という効果もあるのです。
認知症を予防する
口を開けたり閉じたりして噛んで食べるという行為は、脳に酸素を送ったり刺激を与えたりするため、中枢神経を活性化し認知症を予防するといわれます。
誤嚥性肺炎を予防する
嚥下(食べ物を飲み込むこと)機能が衰えると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。このとき、口腔内の細菌が肺に入って起こるのが「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は高齢者の命にかかわることもある怖い病気です。現在、誤嚥性肺炎を含む肺炎は、がん、心疾患につぐ死因の第3位。しっかり予防することが重要です。
口腔機能の低下を防ぐ
高齢者は、「噛む」「飲み込む」「呼吸する」「話す」「表情を作る」といった口腔機能全般が低下しやすい傾向にあります。口腔ケアを通して口腔機能を向上・改善すれば、体全体の健康の回復が期待できます。
最近では、コロナ感染を防ぐためにと診察を控える方が多くなっているように見受けられます。でも、その間に虫歯が増えてしまったり、歯周病が悪化してしまう方も多くいます。口の中の健康は、全身の健康に深く関係していますので、自己判断による中断をせずに、かかりつけ医に相談してください。
当院ではコロナ対策として予約数を調整し、院内が密にならないよう工夫。また、換気、手指の消毒等を徹底しています。
大きなトラブルになる前にぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。
お話し
砂町北歯科
院長
下田隆司先生