股に何かが挟まっている? そんな違和感を経験した方もいることでしょう。
その違和感、実は病気であることも。
清澄女性泌尿器科クリニック院長 平本有希子先生にお話を伺いました。
中年以降の女性に多い骨盤臓器脱
「骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)」とは、聞きなれない病名だと思いますが、「骨盤底筋」という筋肉や臓器を支えている靭帯などがゆるむことで、膣から体外へ臓器が出てしまう状態のことを言います。
中高年の女性に多く、出産したことのある方は誰でも発症する可能性があります。
症状は
初期の段階では、入浴中などに、股の間にピンポン球のようなものが触れる、挟まっている感じがするといった症状が現れます。
進行すると夕方から夜の時間帯で、「股に何かがぶらさがっている」といった違和感が起こります。この違和感は歩行時に自覚しやすい傾向があります。夕方以降に症状が現れるのは、日中に色々な動作をすることで腹圧がかかり、臓器が下がりやすくなるためです。
骨盤臓器脱は発症しても無痛のことが多かったり、恥ずかしくて人に言えなかったりし、ほおっておく方も多いようですが、放置すると尿がでにくい(排尿障害)、トイレが近くなるなどの症状が起こったり、便が出にくくなったり、重症な方は腎臓に負担がかかったりします。
治療は?
完全に治すためには、手術が必要です。でも、発症してもまだ初期段階にいる方や軽症な方、手術を希望されない方には、生活習慣の改善や骨盤底筋体操、装具療法、レーザー治療などの保存的治療もあります。
特に肥満体型の方は、腹圧で症状を進行させないよう減量することも重要。便秘・せきを治す、重いものを持たないように過ごすことも有効です。
・骨盤底筋体操
通勤時、読書や就寝前、料理する時に少しずつ行うことで、習慣化しやすくなります。初期段階であれば2~3カ月程度で、効果が得られるかと思います。また、尿失禁でお悩みの方にも有効な治療法です。
・装具療法
ペッサリーリングを使う治療法を行います。ペッサリーリングとは、膣内へ入れておくことで、膣内から臓器が出てこないようにするために用いる装具です。長期間入れっぱなしにしてしまうと、炎症しておりものが増え、出血する恐れがあります。
そのため当院では自己着脱を推奨しており、入浴や就寝前にリングを抜去し翌朝活動する前にリングを挿入するよう指導しています。
膣内を休ませることで出血やおりものの増加といったリスクの軽減ができます。2~3カ月に1回は定期的に受診し、トラブルなどないか確認しています。また、リングが合わない方は補整下着やレーザーも利用できます。
お気軽にご相談ください
骨盤臓器脱は直接命にかかわる病気ではありませんが、トイレが近くなったり、便秘になったり、生活の質に、大きく影響する場合があります。
どの治療方法を行うかについては、骨盤臓器脱の種類や程度、症状、生活スタイルなどを総合的に判断することが重要です。
お困りのことがございましたらご相談ください。当院では、医師はもちろん看護師等のスタッフ全員が女性。患者様のご心配事やお困りごとを伺い、その方にあったお手伝いをさせて頂きます。
アドバイス
清澄女性
泌尿器科クリニック院長
平本有希子先生