品田 礼子(しなだ れいこ)さん(80歳)

朗読の会 マザー・グース 創始者 品田礼子さん

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朗読で心を繋ぎ、声と人柄で人々を笑顔にする

昭和19年、東京の東大和市で生まれた品田礼子さん。6人兄弟の中で5番目に誕生し、男の子のように育てられた。当時の東大和は農家が多く、友達と一緒にベーゴマを回したり、外で遊び回った思い出がある。子どものころから本が好きで、特に夏休みには父親が近所の子供たちを集めて読み聞かせをしてくれたことが心に深く残っており、その後の朗読活動に影響を与えたようだ。

声の仕事 電話交換師

家が床屋を営んでいたことから親の期待に応え地元の高校に通いながら、夜は理容学校に通い、理容免許を取得。卒業後は理容師として働くが、あまり自分には合わず、直ぐにコニシ株式会社で電話交換師として働きはじめる。当時、電話交換師は外線からの電話を受けて、取り次ぐ役割をしていた。

そこで夫の「安男さんの声」と出会う。安男さんの電話を取り次ぐうちに、「いい声の人だな」と感じるようになり、間もなく声だけで安男さんとわかるようになる。会社の帰り道、たまたま一緒になり、いつも聞いている声に気づき思わず声をかけたそうだ。その時の印象を聞くと「素敵な声の通りでした」と。これが縁となり、結婚することに。

朗読との出会い

結婚後立川で暮らし、2人の娘に恵まれる。その後江東区東陽町に移り住み、そこで朗読と出会う。ある日、区報の中に江東区社会福祉協議会主催「朗読ボランティア養成講座」の募集に目が留まり、「あっ、これいいな」と思い、早速申込む。講座に参加してみると、それは想像以上に面白く、礼子さんはすっかりその魅力に引き込まれた。

講座修了後、礼子さんは区内の図書館で朗読ボランティアとして活動を始めた。特に、目の見えない方々への対面の朗読ボランティアは、貴重な経験となり、希望の本を聞いて朗読するため初見の本を朗読することも多く、自然と朗読力が鍛えられた。朗読を通じて、相手の感情を直接感じ取ることができ朗読ボランティアは大きなやりがいを感じていった。さらに、礼子さんは高田馬場にある日本点字図書館での音訳ボランティアにも携わる。毎週図書館に通い、朗読を録音する。全国の方々が聴くことになるのだが、朗読を聞いた方からのファンレターが届くこともあり、彼女の温かい声と心のこもった朗読は、多くの人々に笑顔と感動を届け続けたのだ。

朗読の会マザー・グースを立ち上げ

墨東病院の小児病棟で読み聞かせを行うことになり、これがきっかけで平成5年に「朗読の会 マザー・グース」を立ち上げる。「朗読の会 マザー・グース」は、今年で設立35年を迎え、現在も30名以上の会員が所属している。会員は熱心に朗読ボランティア活動に取り組んでおり、地域の様々な場所でその活動が評価されている。

10年前、代表の座は教え子である現代表の菅和枝さんに引き継いでいる。後進の指導と朗読ボランティアはペースを少し落とし、今も続けている。礼子さんの朗らかで面倒見のいい人柄と情熱が皆さんを引き付け、マザー・グースの魅力の源となっている。

終の棲家にて

今年になり夫の健康問題もあり、一緒に介護施設に入居したが、明るい性格は健在。日々、自分の健康のために散歩や女性のスポーツクラブ カーブスに通い、楽しい今日々を送り、施設での生活を楽しんでいる礼子さん。

今後どう過ごしますかと質問したところ「まだまだ元気で、周りの人たちにも元気を与えたい」と笑顔で話す礼子さん。これからも地域との絆を大切にし、今後も朗読を通じて人々に希望を届けていくことでしょう。
※次ページにて、「朗読の会 マザー・グース」を紹介しています

古石場福祉会館にて。浅田次郎「ラブレター」の朗読
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