更年期以降の女性が繰り返しやすく、悩まされている方が多い「膀胱炎」。
閉経後にかかりやすいと言われている膀胱炎の原因から予防について、清澄女性泌尿器科クリニック院長、平本有希子先生に伺いました。
女性ホルモンの減少による変化とは?
健康な膣内は、乳酸菌が豊富に存在していて、膣内の環境を保ち、自浄作用により細菌の増殖を抑えているので、膀胱炎にはなりにくい状態です。
更年期以降になると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下していきます。その影響で膣粘膜が薄くなり、膣が乾燥しやすく、膣内の環境を整えてくれる良い菌(乳酸菌)が少なくなって、細菌が繁殖しやすくなります。
閉経すると外陰部が乾燥し、膣内の乳酸菌が減少するので、細菌をうまく排除できなくなってしまい、女性の半数以上が外陰部の不快症状(繰り返す膀胱炎や外陰部のヒリヒリ感、性交時痛など)で悩まされるのです。
そのうえ女性は、尿道が短く、尿道、膣、肛門が近い位置にあるため、細菌が入りやすい身体的な特徴があります。なかでも膀胱炎を引き起こす一番多い細菌は大腸菌です。
さまざまな要因から膀胱炎になると、頻尿、排尿時の痛み、残尿感などの症状が出ます。また、尿検査では細菌は検出されないけれど、膀胱炎に似た症状を訴える方も多くいます。
つらい症状が出る膀胱炎は、再発を繰り返さないために日頃のケアが必要です。
「フェムケア」をご存じですか?
最近、「フェムケア」という言葉をよく耳にするようになりました。
フェムケアとは、「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」をかけあわせた造語。フェムゾーン(膣、外陰部、肛門周りの場所を指します)をケアすることを「フェムケア」と言います。
フェムゾーンは普段はあまりお手入れを気にしない場所なので「わざわざケアが必要なのですか?」と質問される方も多いです。
閉経後の女性は、毎日顔や手をケアすることと同じと考えてください。顔に化粧水をつけるように、乾燥しやすくなった陰部も保湿してあげることが大切なのです。だんだんと衰える自浄作用を補うために、乳酸菌が配合された保湿ジェルやクリームなど、専用のフェムケア用品を積極的に取り入れましょう。
特に慢性的な膀胱炎を繰り返している人や、膀胱炎とは診断されないまでも、「フェムゾーンに違和感がある」、「残尿感を感じる」といった比較的軽い症状を自覚している人はフェムケアを意識してください。再発や悪化を防ぐためには毎日のケアが自分を守るカギとなります。
フェムケア用品はまだ馴染みが少ないかもしれません。購入は病院の泌尿器科や婦人科で扱っているものが安心です。
更年期、そして閉経後は、不快な膀胱炎に代表される慢性的なトラブルがフェムゾーンに増えていきます。快適な毎日を過ごすために「フェムケア」を習慣づけましょう。
アドバイス
清澄女性
泌尿器科クリニック院長
平本有希子先生