編む人も使う人も癒す〝認知症マフ〟がつなぐ優しさのコミュニティ

ニットサークルMUFFS

「マフ」とい言葉をご存じだろうか。もともとは西洋の防寒具が由来で、筒状に編んだ毛糸の中に手を入れて温めるものだ。近年、このマフに花や動物などの飾りを付け、視覚や触覚への刺激や温もりによって認知症の方の心を落ち着かせるケア用品として活用されるようになった。イギリスで発展したこの〝認知症マフ〟を制作するボランティアサークル「ニットサークルMUFFS(マフ)」が地域で温かな活動を続けている。

代表の田村さんがこの取り組みを知ったのは、2023年。SNSで紹介されたマフの活動を目にし、「これは人の心を温めてくれるもの」と強く共感したという。田村さんは祖母の在宅介護を3年間経験し、その後も介護施設で10年間勤務。認知症の方に寄り添う日々を過ごしてきた。

ある介護の現場でマフを使ってみたところ、愛犬家の方が犬の飾りを付けたマフを優しく撫で、穏やかな表情を見せた。その姿にケアスタッフが思わず涙ぐんだという。この出来事をきっかけに、「必要な人に届けたい」という思いが確信に変わり、サークル立ち上げへとつながった。

温もりが引き出す安心とコミュニケーション

活動はヨガ仲間や編み物仲間を中心に広がり、現在は11名、関わる人を含めると20名ほど。完成したマフは、メンバーや地域のつながりを通じて、認知症の方がいるご家庭に届けられている。本来は介護施設などにもっと広く届けたいという思いがあるが、製作数や人手が追い付かず、今はできる範囲で対応している状況だ。

田村さんが大切にしているのは「ノルマを作らない」こと。月に一度の活動日に、各自が編んだマフを持ち寄り、情報交換をしながら和気あいあいと編み物を進める。「楽しく、無理なく続けてほしい」という田村さんの思いが、メンバーの信頼を集めている。

マフの効果は大きい。毛糸の温かさに触れることで表情が和らぎ、コミュニケーションのきっかけにもなる。点滴チューブを触ってしまう方が、マフに手を入れることで落ち着く例もある。ケアスタッフにとっても、マフは回想を引き出す手助けとなり、利用者との関りを深める存在だ。「編む人も使う人も癒される」。田村さんはそう語る。

また、地域の治療院が作品を置いて紹介してくれるなど、活動を知ってもらう機会も少しづつ増えてきた。地域の中でゆっくりと広がりを見せている。

一方で、材料費や人手不足は課題だ。会費制にはしたくないという思いから、毛糸代などの負担は続く。施設からの「もっと欲しい」という声に応えるため、若い世代への呼びかけや寄付の仕組みも検討している。「好きな編み物で誰かの力になれる。この活動をこれからも大切に育てていきたい」。田村さんの情熱とメンバーの明るい笑顔が、活動の原動力になっている。

院内に作品を置く治療院から
「とても意義のある活動で、もっと広まってほしいと感じています。マフには人の本能的な安心感に働きかける力があります。当院でも数点を置かせていただき、患者さんに知っていただくきっかけづくりに協力しています。」
天明堂はりきゅう治療院
院長 中村 和明さん

ニットサークル MUFFS(マフ)
活動日:毎月第1木曜日
時間:9時半〜11時半
場所:江東区総合区民センター(江東区大島4−5−1)
問い合わせ先:090(2436)6840(田村)

Instagram
よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

目次
閉じる